メイドたちの誇り:チューエル大掃除奮闘記

エピソード

1. ユリシアの場合

今日はメイド喫茶「チューエル」の大掃除の日。私も掃除を任されて、一生懸命頑張らなきゃって思ってる。学院指定のメイド服を着るのは、いつもよりちょっと特別な気持ちになるんだよね。私もオリジナルデザインのメイド服を作ってみようと思ったけど、まだ裁縫の技術が足りなくて、今回は普通の学院指定の服。まあ、これはこれで可愛いから良しとしよう。

掃除をしていると、思ったより古びた部分が見えてくる。歴史のある建物だから仕方ないけど、これをちゃんとピカピカにするには時間がかかりそう。それでも、ここは地域の方々に愛されている場所だし、綺麗にしておきたいって気持ちが強いんだよね。

「あー、もう汗がすごい…」ふと手を止めて額を拭うと、もう汗びっしょり。でも、おにいたん♡に見られたら、かっこよく頑張ってるところを見せたいから、休まずに頑張ろうっと。ほら、掃除を頑張ってる姿って少しだけお淑やかに見えたりしないかな?いやいや、そう考えるよりも、今は目の前の床を磨かないと。

でも、私が一生懸命やってるのに、ちらっと見たら雫ちゃんが座ってスマホをいじってる。「雫ちゃん、またサボってるの?」なんて声をかけるけど、彼女は笑いながら「私はやることやったから大丈夫~」って。それ、ほんとかなぁ?ちょっとモヤモヤしながらも、私は自分の持ち場をしっかりやろう。

他にも何人かサボってる子がいるけど、こういう時こそ自分をしっかり持たなきゃね。おにいたん♡に恥ずかしくない私でいたいんだから。それに、アン先輩もシャム先輩も頑張ってるし、私だけが手を抜くなんてできない。メイド喫茶は私たちの誇りだし、ここでの仕事を通して成長できるのは、淑女として大切なこと。

「よし、あと少し…!」手に力を込めて、床を磨く。頑張れば頑張るほど、達成感がじんわりと胸に広がってくる。大掃除は大変だけど、その分、終わった後の達成感は最高なんだよね。おにいたん♡に褒めてもらいたい気持ちを胸に、私は汗を拭いながら、次の場所に向かった。

2. 雫の気持ち

今日の大掃除?ああ、やらなきゃいけないのは分かってるけど、そんなに必死になる必要ある?だって、私はもう自分の担当した部分は済ませたんだし、ちょっとくらい休憩しててもいいでしょ?ふぅ、周りはみんな頑張ってるみたいだけど、私はそんなにガツガツやるタイプじゃない。

スマホで新しい仕事のオファーが入ってるかチェックしてたら、ユリシアがこっちをチラッと見て、ちょっとムッとした顔。「雫ちゃん、またサボってるの?」だってさ。別にサボってるわけじゃないのよ。やるべきことはやったんだから、少しだけ自分の時間を楽しんでるだけって感じ。

まあ、ユリシアは真面目だから、こういう場面では全力で頑張るんだよね。それはそれで尊敬する部分もあるけど、ちょっと堅苦しいというか、私には無理なタイプ。だって、私は芸能界で輝くスターを目指してるんだから、そんな泥臭いことに夢中になれるなんて、ある意味すごいと思う。

それにしても、汗びっしょりのユリシアを見てると、なんかちょっと負けたくない気持ちが湧いてくる。和先生が見てたら、彼女の頑張りに感心しちゃうんだろうな。…いや、そんなの許せないかも。私も少しはやるか。

「はぁ…めんどくさいけど、ちょっとだけ頑張るか。」そう言って私は、再びモップを手に取った。だって、和先生に「雫、やっぱり手を抜くな」なんて言われたら、ちょっと悔しいじゃない?

ユリシアが張り切ってる横で、私も軽くモップをかける。見た目だけはしっかりしてるように見えるようにね。でも、無理しすぎない程度に。…だって、今日は夜遅くまでスケジュールが詰まってるんだからさ。

3. 渚先生の想い

今日も、メイド喫茶「チューエル」の大掃除の日がやってきました。生徒たちと一緒に掃除をするのは、責任感を感じると同時に、心地よい充実感もあります。和先生も掃除を見守っているようですが、少し疲れが見えたので、コーヒーを入れてあげることにしました。

「和先生、コーヒーを入れてきました。お疲れだと思って…」と、彼にそっと差し出しました。彼は微笑んで受け取ってくれて、私もほっとします。

コーヒーを飲む彼の姿を見て、ふと自分も自然と彼の隣に寄り添っているのに気づきました。近くにいると安心するというか、彼の存在が私にとってとても大切で、そばにいたくなってしまうんです。

「和先生、今日の生徒たち、頑張ってますね」と、軽く会話をしながら、つい彼を見上げてしまう。和先生の反応は穏やかで、私たちを見守っているその眼差しに、やはり惹かれるものを感じます。こうして彼のそばにいると、心の中が少し温かくなるんです。

でも、そんな私の小さな幸せも長くは続きませんでした。教室の向こうで、雫さんが何やら大胆な動きを見せ始めたのです。彼女は背中を伸ばし、まるで先生の視線を誘うかのように腰をひねり、わざとゆっくりと立ち上がります。思わず視線が引き寄せられ、和先生もまた、彼女の動きに気を取られている様子が見て取れます。

「あ…」私は無意識に小さく息をついてしまいました。心の中で焦りが広がるのがわかります。和先生の視線が雫さんに向けられていることに気づいたとき、胸の奥がズキリと痛んだのです。「やっぱり、和先生にとっては生徒が大事なんだ…」と理解はしているつもりでしたが、どうしても心が穏やかでいられません。

私はふと、彼の隣にいる自分が頼りなく感じてしまい、背筋を正しました。「私ももっとしっかりしないと…」心の中でそう決意します。だって、彼にとって、私はただの元教え子ではなく、同僚として、そしてもっと支えになれる存在になりたいから。だけど、こうして隣にいると、やはり和先生は何も言わず、コーヒーを飲んでいるだけ…。

「もう少しで、この空気を変えられる何かを…」私は彼に気づいてもらえる存在でありたいと、心の中で強く願いながら、そっと自分の手を胸元にあてました。感情が溢れそうになるのを抑えつつも、隣にいられるだけで、今は幸せだと自分に言い聞かせるしかありません。