夜の静かな時間、ユリシアは自分の部屋で、最近学んだ保健体育の知識を思い出していました。テキストのページをめくりながら、自分の身体についての知識が少しずつ深まっていくのが楽しくて仕方ありません。でも、どうしても頭だけで理解するのでは物足りない。だから、試してみたくなるのです。
(これって……本当に、正しいやり方なんだよね……?教科書の説明通りにやってみてるけど……)
ユリシアは、そっと自分の手を動かしながら、保健体育の授業で学んだ内容を実践していました。でも、どこか恥ずかしい気持ちもあり、顔が赤くなってしまう。そんな自分の姿に少し戸惑いながらも、なんとか勇気を出して続けてみます。
「ん……ううん……」
そんな時、不意に声が漏れてしまいました。それを隣の部屋で寝ていたおにいたんが聞いてしまったのです。
おにいたんはその声に気づき、驚いた顔で部屋のドアをそっとノックして、「ユリ、大丈夫か?なんだか苦しそうな声が聞こえたけど……」と声をかけてきました。
ユリシアは一瞬、ドキッと心臓が跳ね上がり、動揺しながらも必死に取り繕おうとしました。「え、えっと!大丈夫だよ、おにいたん!ただの独り言だから、全然平気……なの!」
(うわぁ!どうしよう、おにいたんに聞かれちゃった……!?本当に聞かれたの?それとも私の勘違い……?)
「でも、息が荒かったし、苦しそうにしてたみたいだから……本当に何もないならいいけど、何か心配なことがあったらすぐに言うんだぞ?」と、おにいたんは心配そうな顔で言ってくれました。
ユリシアは、その優しい言葉にどう返していいかわからなくなって、さらに顔が真っ赤に。「う、うん!本当に大丈夫だよ、おにいたん!」と言いつつも、内心ではどうしようもない恥ずかしさでいっぱいです。
(だめだ、こんな時におにいたんが優しくしてくれると、もっと恥ずかしくて……でも、なんだか嬉しい気持ちもあって……複雑な気分……)
「ユリ、顔が赤いぞ。本当に熱はないんだよな?」と、おにいたんが真剣な顔で尋ねてきます。
ユリシアはなんとか強がって笑おうとしながら、「そ、そんなに気にしないで、おにいたん!私、本当に大丈夫だから!ただちょっと……ね、あの……保健体育の勉強をしてただけで……」と答えました。
おにいたんはその言葉に一瞬驚いた表情を浮かべましたが、「そっか、保健体育の勉強か。真面目に頑張ってるんだな、ユリ」と少し照れたように微笑みました。
(おにいたん……もしかして、気づいてない?それとも……わざとスルーしてくれてるの?優しいのはわかるけど、なんだかズルい……)
ユリシアは少し悔しそうに唇を噛み締めながら、「うん、保健体育って、すごく大事だし、ちゃんと理解しておきたいから……。だから、ちょっとずつ自分でも試してみようかなって思って……」と続けました。
おにいたんは、ユリシアの言葉に一瞬だけ戸惑ったものの、「それは偉いな、ユリ。勉強熱心で頼もしいぞ。でも、何か困ったことがあったらいつでも相談してくれ」と、あくまで穏やかに答えました。
(やっぱりおにいたん、優しすぎるよ……。私のこと、何でも知ってるみたいで……でも、こんな気持ちまで伝わったら、どうしよう……)
ユリシアは心の中で、おにいたんに対する気持ちがますます強くなるのを感じながらも、「うん、ありがとう、おにいたん……本当にありがとう……」と、小さな声でつぶやくのでした。