手料理ミッション!
その日は、学院の休みの日で、ユリシアは朝からそわそわしていた。ずっと計画していた「おにいたんのために手料理を作る」という大きなミッションがついに実行される日だったからだ。彼女はキッチンでエプロンをつけ、ちょっと緊張しながらも楽しそうに準備を始める。
「今日はおにいたんのために、私の得意なパスタとデザートを作るんだ!」
ユリシアが選んだのは、彼女の得意料理のひとつである「クリーミーなカルボナーラ」と、自家製の「フルーツタルト」。どちらも、おにいたんが喜んでくれると信じて、一生懸命に練習したレシピだ。
「大丈夫、ちゃんとできるよね…。うん、今日は絶対に成功させるんだから!」
まずは、カルボナーラの準備に取り掛かる。ユリシアは慎重にベーコンをフライパンでカリカリに焼き上げ、クリームと卵を使ったソースを用意する。天然なユリシアだから、途中でうっかりベーコンを少し焦がしてしまったり、クリームを飛ばしてしまう場面もあったけれど、そんなハプニングにも負けずに進んでいく。
「ふぅ、これでソースは完成!あとはパスタを茹でるだけだよね。えっと、確か8分…いや、10分?…まあ、いいか!」
パスタの茹で時間に少し迷いながらも、ユリシアはその可愛らしい天然ぶりを発揮しつつ、何とかパスタを仕上げる。そして、パスタが茹で上がったらすぐにソースと絡め、最後にパルメザンチーズをたっぷりかけて、完成だ。
「できた!うわぁ、美味しそう~!おにいたん、きっと喜んでくれるよね?」
次にユリシアは、デザートの準備に取り掛かる。彼女が一番得意としているのが、サクサクのタルト生地に季節のフルーツをたっぷり乗せたフルーツタルト。タルト生地は前日に作って冷やしておいたので、今日はフルーツをカットして、生地に美しく並べていくだけだ。
「おにいたん、甘いもの好きかなぁ?でも、フルーツタルトなら大丈夫だよね!」
ユリシアは、いちご、ブルーベリー、キウイ、オレンジなど、色とりどりのフルーツを丁寧に並べ、最後に粉砂糖をふりかけてタルトを仕上げる。その姿は、彼女の普段の天然な一面からは想像できないほど真剣だ。
「よし、これで全部完成!さあ、おにいたんに食べてもらおう!」
ユリシアは、少し緊張しながらも楽しそうにおにいたんを呼び、テーブルに並べた手料理を見せる。目を輝かせながら「どうかな?」と期待を込めた瞳で見つめるユリシア。彼女の心の中ではドキドキが止まらない。
「ユリシア、すごく美味しそうだよ。ありがとう」と、優しい言葉をかけると、彼女の顔がパッと明るくなる。
「本当!?よかった~!もう、失敗したらどうしようって思ってたんだよ」
一口食べてみると、パスタは絶妙なクリーミーさで、ベーコンの香ばしさがソースにしっかり溶け込んでいる。おにいたんは、思わず微笑んでしまう。味も見た目も大満足だ。
「これ、本当に美味しいよ。ソースの加減も最高だし、ベーコンもカリカリで香りがいい。デザートも楽しみだな」
ユリシアはほっと胸をなでおろし、同時に少し照れくさそうに笑う。
「えへへ、おにいたんにそう言ってもらえると、すごく嬉しいな。デザートもね、頑張ったから、絶対に美味しいよ!」
続いて出されたフルーツタルトも、一口食べると、甘酸っぱいフルーツとサクサクの生地が絶妙なバランスで、口の中に広がる。甘さ控えめのクリームがフルーツの味を引き立て、これもまた最高の出来だ。
「うん、このフルーツタルトも本当に美味しい。タルト生地も完璧だし、フルーツが新鮮でいいね」
ユリシアは、おにいたんの喜ぶ姿に満面の笑みを浮かべながら、「やったー!」と心の中で小さくガッツポーズを決めている。
食事が終わり、ユリシアは少し照れくさそうに言う。
「おにいたん、今日は私の手料理、食べてくれてありがとう!おにいたんのために作るのって、やっぱり特別な感じがして…すごく楽しかったんだ。また今度、一緒に食べようね?」
おにいたんは優しく微笑みながら、ユリシアに「ありがとう、また楽しみにしてるよ」と声をかける。彼女の努力と思いやりが伝わる、とても温かいひとときだった。
ユリシアは、少し恥ずかしそうにしながらも、おにいたんのために手料理を作ることができた達成感と喜びでいっぱいだった。次回も、もっと美味しい料理を作ろうと、彼女の心の中には新たな決意が芽生えている。