2025年9月10日(水曜日)
第1章:乙女の秘密特訓♡
九月に入り、朝晩の風にほんの少しだけ秋の気配が混じり始めた、ある日の放課後。 和先生の家の、自室。ユリシアはドアにしっかりと鍵をかけると、カーテンを閉め、小さな決意と共に息を吸い込んだ。
(ふふっ、おにいたん♡、見ててね…😏)
彼女はベッドの下から、こっそり隠しておいた衣装ケースを取り出す。中から現れたのは、ふわふわの白い尻尾がついた、光沢のある青いレオタード。そして、頭にはぴょこんと立った、愛らしいウサギの耳のカチューシャ🐰💙 そう、これは彼女がおにいたん♡と一緒に夢中になっているアニメ、『トゥインクル☆バニーダンス』に登場する、三つ子バニーズの末っ子・アオちゃんの衣装だ。
手際よく衣装に着替えたユリシアは、姿見の前に立つと、きゅっと頬を引き締めた。 「よし…!『お月様にお願いポーズ』、練習スタート!💪」
彼女は、アニメの決めポーズを思い出しながら、ぴょん、と軽く跳ねてみる。両手を胸の前で祈るように組み、少しだけ首をかしげて、鏡の中の自分に、とびきり甘い笑顔を向ける。
(うん、いい感じ♡ これなら、おにいたん♡も絶対にメロメロになるはず!😍)
先週末、彼女の心に巣食っていた、あのモヤモヤとした不安。毎週土曜日になると、どこかへ出かけてしまうおにいたん♡。その背後には、睨んだ通り、渚先生の影があったのだ。先日のストレッチ対決以来、ユリシアの心の中では、静かな対抗心が燃え上がっていた。🔥
(渚先生が大人の余裕で来るなら、私は、私にしかできない方法で勝負するんだから!😤)
その秘策こそが、来たる九月十五日、十五夜の夜に決行される、「お月見バニー♡デート大作戦」だった。🎑 お月見団子を二人で食べながら、月の光の下で、バニーの格好をした自分が甘える。想像しただけで、顔が熱くなる。😳💕
(完璧な計画…!これぞ、婚約者である私の、ホームグラウンドでの必勝法なんだから!✨)
「次は、『にんじんもぐもぐポーズ』よ!」 ユリシアは、指で輪っかを作って口元に当てると、小動物のように可愛らしく頬を動かしてみせる。 その姿は、まさにおにいたん♡の心を射抜くためだけに磨かれた、一途な矢のようだった。💘
第2章:淑女と女優は、何かを察する
その頃、寄宿舎「月華寮」の一室。 雫と茉里絵は、それぞれの机で自習に励んでいた。

「…ねえ、茉里絵」 不意に、雫がペンを置いて声をかけた

なんですの、雫さん?

最近のユリシア、何か変だと思わない?😒
茉里絵は、読んでいた古典文学の本から顔を上げ、優雅に首をかしげた。

変、と申しますと?🤔

なんか、こう…上の空というか、一人でニヤニヤしてるというか。この前も、購買部でみたらし団子とうさぎの形をしたお饅頭を、真剣な顔で選んでたわよ。あいつ、そんなに和菓子好きだったかしら

まあ、食欲の秋ですもの。ユリちゃんも、色々食べたい気分なのかもしれませんわね😊
茉里絵はおっとりと答えたが、その脳裏には、数日前の出来事が浮かんでいた。ユリシアの家に遊びに行った際、ベッドの下から、ちらりと青い布と白いふわふわしたものが見えたような気がしたのだ。

あれは、確か…
コンコン。 控えめなノックと共に、ひょっこりと柚羽が顔を出す。

あの…雫先輩、茉里絵先輩。夜分にすみません。簿記のことで、少しだけお伺いしたいことが…

いいわよ、入りなさい

どうぞ、柚羽さん
柚羽は、二人に参考書を見せながら質問を終えると、少しだけ躊躇うように切り出した。

あの…全然関係のないお話なのですが…。昨日、放課後に家庭科室の前を通りかかったら、中にユリシア先輩が一人でいらっしゃって…。それで、中から『ぴょんぴょん…』って、小さな声が聞こえてきて…😥
その一言に、雫と茉里絵の動きが、同時に止まった。
ぴょんぴょん…?🐰 雫の脳裏には、購買部で和菓子を選ぶユリシアの姿が。 茉里絵の脳裏には、ベッドの下から見えた、青い衣装の残像が。 そして、二人の頭の中に、一つのアニメのタイトルが、稲妻のように閃いた。⚡
『トゥインクル☆バニーダンス』…!

あいつ…
雫が、呆れたように、しかしどこか面白そうに呟く。

また何か、企んでるわね…😏
第3.章:月の女神の、残酷な真実

でも、どうして今頃、バニーですの…?
茉里絵が、不思議そうに呟く。

ハロウィンには、まだ早すぎますし…🎃

さあね。でも、あいつが何かする時は、大抵あの朴念仁…和先生が絡んでるに決まってるわ
雫が腕を組む。

あっ!
その時、柚羽が何かを思い出したように、小さな声を上げた。

そういえば、来週の月曜日は、十五夜です!🎑 きっと、ユリシア先輩は、和先生と一緒にお月見をするために…!
十五夜。 その言葉に、雫と茉里絵は顔を見合わせた。なるほど、それなら辻褄が合う。和菓子も、ウサギも、ぴょんぴょんも…。

なるほどね。あの男、バニー好きだものね。分かりやすい作戦じゃない😒
雫は鼻で笑ったが、その瞳の奥には、わずかな嫉妬の色が浮かんでいた。

まあ、ユリちゃんらしい、可愛らしい計画ですわね🌸
茉里絵は微笑みながらも、一枚のスケジュール帳を、優雅に開いた。彼女の几帳面な性格が、ふとした疑問を呼び起こしたのだ。

ですが、少しお待ちになって。わたくしのスケジュール帳で、確認いたしますわ
パラパラとページをめくる音だけが、部屋に響く。やがて、茉里絵は顔を上げると、少しだけ困ったような、しかしどこか面白さをこらえているような、絶妙な表情で言った。

…皆様に、一つ、残念なお知らせがございます

なによ、もったいぶらないで

今年の中秋の名月は、十月六日、ですわよ
「「…………えぇぇぇっ!?」」😱
雫と柚羽の声が、完璧にハモった。 三人の間に、気まずい沈黙が流れる。
その頃、ユリシアは。 「完璧…!これでおにいたん♡は、絶対に私のものよ!💖」 鏡の前で、完璧な「お月様にお願いポーズ」を決めて、一人、勝利を確信していた。
第4章:偽りのお月見計画?

…あいつ、本気で十五日にやるつもりなの?ウケるんだけど!😂
沈黙を破ったのは、こらえきれずに吹き出した雫だった。

で、ですが、どうしましょう…!ユリシア先輩に、教えてあげた方が…!😥
柚羽があわあわと慌てる。

いいえ、その必要はありませんわ
茉里絵は、悪戯っぽく微笑むと、スケジュール帳を閉じた。

ユリちゃんが、それほどまでに楽しみにしている計画ですもの。わたくしたちが、それを壊すのは野暮というものでしょう?😉

じゃあ、どうするのよ

決まっておりますわ
茉里絵は、立ち上がると、窓の外に浮かぶ、満月だった一昨日の名残を惜しむかのように、まだ丸く明るい月を見上げた。

でしたら、わたくしたちで、九月十五日を**『ユリちゃんのためだけの、特別なお月見の日』**にして差し上げるというのは、いかがかしら?✨
その提案に、雫は一瞬きょとんとした後、ニヤリと口の端を上げた。

…なるほどね。あいつのドジに便乗して、あたしたちも楽しもうってわけね。悪くないわ😏
一方、その頃。職員室では。
「まあ、今年の中秋の名月は十月六日なのね。その日は、何か特別な授業でも企画してみようかしら…」渚先生が、一人、カレンダーを見ながら静かに微笑んでいたことを、まだ誰も知らない。😊
ユリシアの、ちょっぴり早とちりな、しかし愛情たっぷりの計画。 その真実を知りつつも、あえてそれに乗っかろうとする、優しい(?)友人たち。 そして、本当の満月を見据える、もう一人の挑戦者。
九月の夜空の下で、少女たちの想いは、それぞれの軌道を描きながら、静かに交錯していく
トゥインクル☆バニーダンス(作中アニメ)

