あの夏の日、ユリシアと初めて一緒に花火大会に行ったことを、今でも鮮明に覚えている。ユリシアはまだ6歳だった頃。あの日、彼女は白いワンピースを着て、少し大きめの麦わら帽子をかぶっていた。手をぎゅっと握って離さない姿が、無邪気で可愛らしかった。
「おにいたん♡、花火って大きいの?こわくない?」と、ユリシアは少し不安そうに尋ねてきた。
「大丈夫だよ、ユリシア。おにいたん♡が一緒にいるから、怖がらなくていいんだよ」と優しく言うと、彼女は少し安心した顔を見せてくれた。でも、その顔にはまだ少しの不安が残っていた。
夕方、広場に着いた頃には、すでに多くの人が集まっていて、賑やかな雰囲気に包まれていた。ユリシアは私の隣にぴったりと寄り添いながら、あちこちをキョロキョロと見回していた。大勢の人や、屋台の明るい灯りに少し圧倒されているようだったが、それでも彼女は私の手をしっかり握っていた。
やがて、空に大きな一発目の花火が打ち上がった。ドーンと響く音と共に、夜空が鮮やかに彩られる。ユリシアは一瞬で硬直し、驚きと恐怖が彼女の小さな体全体に伝わってきた。彼女の目は丸くなり、突然「おにいたん♡!」と叫びながら、私の腕にしがみついてきた。
「おにいたん♡、こわい!こわいよぉ……!」彼女の声は震えていた。
私はその小さな体を包み込むように抱きしめて、彼女の頭を優しく撫でた。「大丈夫だ、ユリシア。おにいたん♡がずっとここにいるから、絶対に怖いことなんてないよ。ほら、花火は怖くないんだ。ちょっと大きな音がするだけだからね。」
しばらくの間、ユリシアは私にしがみついたままだったけれど、少しずつ私の言葉で落ち着いてきたようだった。花火の音に慣れてくると、彼女の目が徐々に花火に向き始めた。
「おにいたん♡……きれい、だね……」彼女は小さな声でつぶやいた。
私はニコッと笑いながら、ユリシアの頭を撫で続けた。「そうだろう?花火は本当にきれいなんだ。怖いものじゃなくて、楽しいものだよ。もっとよく見てごらん。」
次々と夜空に咲き誇る色とりどりの花火に、ユリシアの目は大きく輝き始めた。最初の恐怖が嘘のように、彼女は花火に夢中になっていった。
そして、私は彼女を肩車して、もっとよく見えるようにしてあげた。「さぁ、これで一番良い景色が見えるだろう?」
「わぁっ!すごい!おにいたん♡、たみゃやぁぁぁーーー!!」ユリシアは元気いっぱいに叫んで、笑顔を浮かべていた。その無邪気な声と笑顔が、私の心を温かく包み込んだ。
彼女の楽しげな声が夜空に響き渡り、周りの人たちも微笑んでいた。ユリシアの小さな手が、私の髪をつかんでバランスを取りながら、次々と打ち上がる花火を指差して「すごい、きれい!」と喜ぶ姿が、私の心に深く刻まれた。
その瞬間、私は強く感じた。ユリシアが本当に可愛くて、大切な存在だと。この子が成長していく過程で、どんな困難や恐怖が訪れたとしても、私はずっと彼女を守っていきたいと心に誓った。
花火大会の終わりが近づくと、ユリシアは少し名残惜しそうな顔をしていた。「もう終わっちゃうの?」
「また来年も一緒に来ような、ユリシア。次はもっともっと大きな花火を見に行こう。」
「うん、約束だよ、おにいたん♡!」
その夜、帰り道ではユリシアは私に手を引かれながら、「楽しかったぁ」と繰り返しつぶやいていた。家に着くと、彼女は疲れ果ててすぐに眠りについたが、その寝顔には満足感と幸せが満ちていた。
私はその夜、彼女が安心して眠る姿を見ながら、心の中で誓った。どんな時でもユリシアを守り、彼女が安心して笑顔で過ごせるように、いつも側にいようと。この愛らしい花火大会の夜は、二人にとってかけがえのない思い出となった。