2025年2月15日 深夜
今日も夜更かしだな。
さっきまで、雫のデビューライブの動画を見返していた。生徒が撮ったものらしいけど、画質は悪い。それでも、あのフリルドレスで懸命に歌う姿が、頭から離れない。
机の引き出しに、ユリシアとの約束の証がある。婚約。まだ1年生の彼女に、そんな重い約束をしてしまって、本当にいいのかな。
あの場で俺ができたのは、「よかったよ、雫」と微笑むことだけだった。教師として、他に何ができる? でも、本当はもっと伝えたかった。あの頑張りに、心から感動したって。
なぜこんな気持ちになるんだろう。
ユリシアという、守ると誓った存在がいるのに。彼女の純粋な愛情は、俺の乾いた心をいつも温めてくれる。幼い頃から面倒を見てきたあの子のためなら、何でもするつもりだ。
それなのに、雫に心が動く。補講で反発しながらも、妹さんのために必死に取り組む姿を見ていると、放っておけない。強がりの裏の優しさが、分かるようになった。
50を過ぎた教師が、教え子にこんな想いを持つなんて。資格がないんじゃないか。恋愛経験もない俺が、彼女たちの大切な時間を預かってるなんて。
机の書類の山を見て、溜息が出る。渚先生の存在も、最近気になる。元教え子で、今は頼れる同僚。彼女の強さが、俺を支えてくれているのに。
このノートにだけ、本当の気持ちを書いておく。そうしないと、自分に嘘をつきそうだ。
答えは、出ない。でも、明日も教壇に立つよ。皆を正しく導けるよう、頑張るしかない。
おやすみ。