
渚、旧校舎の片付けで見つかった古いアルバム、覚えてるかい?

あ、第18回学院祭の特集でしょうか?懐かしいですね…!

そう、それだよ。昨日校長室で古い資料整理してたらポンと出てきてさ。渚を保健室に運んでる写真がそのまま残ってるんだぞ。見て思わず笑っちゃったよ。

あの写真が…!学院祭で倒れたときの…。まさか今でも残っていたなんて…。和先生と二人きりの、大切な思い出…。笑ったなんて言われると少し悲しいけど…。

そ、その写真…まだあったんですね。可笑しいですよね…。恥ずかしいです…。当時の私は本当に弱くて…。

なに言ってるんだよ。笑ったのは懐かしさでだよ。恥ずかしがる必要なんてないさ。あれから渚がどれだけたくましくなったか、その前後比較みたいなもんだ。今じゃ立派な体育教師で、生徒たちのアイドルじゃないか。

あの日のことは今でも鮮明に覚えています…。学院祭の準備で無理をして倒れてしまって…和先生に抱きかかえられて保健室まで運ばれたこと…。

俺も覚えてるよ。あのときの渚は、羽みたいに軽くてさ。そういや昨日アルバム見てたら、あの日のこと思い出しちゃってな…

あの日、いきなり倒れた渚を見たときはマジで焦ったよ…
——10年前、第18回学院祭準備中——

おい渚、無理してないか?顔色悪いぞ。大丈夫か?


そんな無理するなよ。少し休んだ方が…あっ!渚!

(崩れ落ちる渚)う…すみません…先生…。

おい大丈夫か!?誰か保健室の先生を…いや、待ってられない。俺が連れていくぞ!
(渚を抱き上げる和先生)

せ、先生…ごめんなさい…ご迷惑を…。

迷惑なんてとんでもない。心配かけんなよ、渚。
(保健室に到着して)先生!渚が倒れました!

(ベッドに寝かされて)先生…クラスの準備が…私がいないと…。

何言ってるんだ、無理するんじゃない!まずは自分の体調を心配しなくちゃダメだろ…。渚がいないと困るのは、クラスの準備だけじゃないんだぞ。みんな心配してるんだから。
俺だって心配でたまらないんだからな。

先生…。(涙ぐみながら)弱い私では、先生のお役に立てなくて…。

馬鹿言うな。お前が弱いなんてとんでもない。渚は強い子だよ。ただな、今は体を休めることも強さのうちなんだ。
いいか、強さってのは無理することじゃないんだぞ。自分の限界を知って、それを少しずつ広げていくことなんだ。そこを勘違いするなよ。

強さ…。先生みたいに、私も強くなりたいです…。誰かを助けられるような…。

ああ、絶対なれるさ。お前ならな。
(額に手を当てて)ちょっと熱があるな。今日はもう無理せず休みなよ。いいな?

はい…。先生、約束します。私、絶対に強くなります。いつか先生に恩返しできるように…。
——現在——

あの日の約束を胸に、私はずっと頑張ってきたんです…。あの頃は本当にしょっちゅう保健室のお世話になっていましたよね…。和先生がいつも見舞いに来てくださって…。「もっと強くなれ」って。

ああ。でもな、「強くなれ」って言ったのは、単に体のことだけじゃなかったんだぞ。渚には、どんな困難も乗り越えられる強い心があると思ってたからな。それが今、見事に証明されてる。

和先生…。その言葉が私の支えになったんです。あの頃は自分に自信がなくて…でも先生が私を信じてくれたから…。

俺のほうこそ、渚の努力には本当に感心してるんだぞ。保健室のベッドから立ち上がって体育教師になるってのは、並大抵の根性じゃできないことだ。
それにしても、まさか渚がこんなにたくましくなるとはな。あんなに華奢だったのに…今じゃ俺より腕立て伏せできるんじゃないか?ちょっと負けた気分だよ。

あの…実は…卒業アルバムに書いた言葉、覚えていますか?「病弱な私をいつも励ましてくれた和先生。あなたのおかげで今の私があります。これからは私が強くなって恩返しします」って…。

ああ、もちろん覚えてるさ。あの言葉読んだとき、教師冥利に尽きるなって思ったよ。渚が立派な大人になって、しかも同じ学院の教師として戻ってきたときは、本当に嬉しかったんだ。誇らしかったよ。

教師冥利に尽きる…。そうですよね、和先生にとっては私はただの教え子の一人なんだ…。でも私にとっては、和先生は特別な存在なのに…。恋心を抱いてもいいのかな…こんな気持ち…。

あの言葉は今も変わらない気持ちです。私があんなに体を鍛えたのも…強くなりたいという一心で…。もう二度と誰かに抱えられて運ばれる弱い自分ではなく、今度は私が守れる強さが欲しかったんです。

へぇ、そうだったのか。渚のあの鍛えられた体は、そういう決意の表れだったんだな。でも、誰かを守るって…誰を守りたかったんだ?

それは…特に和先生を…「今度は私が先生を守りたい」という気持ちが強かったんです。

俺を…?(驚いた表情で)まさか、そこまで考えてたとは…。
あぁ、そういえばアルバムの「10年後の私」ってページも見つけたんだよ。「将来の夢:素敵な家庭を持つこと。特に大切な人の奥さんになること」って書いてあってな。あの頃から明確な夢があったんだな、渚は。

そのページまで見つかってしまったの…!「大切な人」が誰のことか気づいてしまっただろうか…。あの頃から変わらない想い…。和先生、あなたの奥さんになりたいという気持ち…。

あ…!そ、それは…恥ずかしいです。若気の至りで…。

いやいや、夢を持つのは素晴らしいことだよ。きっといつか渚も素敵な家庭を持てるさ。…それにしても、気になるなぁ。その「大切な人」って誰だったんだ?当時、好きな男の子でもいたのか?

まさか今この質問を…!?どうしよう…。正直に答えるべきなのか、ごまかすべきなのか…。でも、もしかしたらこれが私のチャンスなのかも…。鍛え上げた心と体に誓って…今こそ強くなるとき!

あの…その…実は…それは…。

おにいたん〜!渚先生〜!校長先生がめっちゃ怒ってるよ〜!「職員会議を始めるって言ってるのにどこ行ったの!?」って言ってるよ〜!早く行かないとヤバいって!

げっ、もうそんな時間か!ユリシア、ありがとう!すぐ行くよ。

は、はい!すぐに参ります!

ああ…ユリシアさんのタイミング…。でも、きっといつか必ず…この気持ちを和先生に伝える日が来るはず。今日はまた逃げてしまったけれど…。でも、もしかしたら和先生は何か気づいてくれているのかも…?そうだとしたら…私はもっと強くなって、堂々と伝えられる日まで努力し続けなくちゃ!
(廊下を歩きながら、少し視線を外して)

あのさ、渚…。さっきの話なんだけど…。その、「大切な人」の話、なんとなく気になっちゃってさ。今度、時間あったら…教えてくれないかな?(照れたように髪をかき上げながら)別に急ぎじゃないんだけどね。

え?あ、はい!もちろんです…!い、いつでも…!

和先生が気になってくれてる…!これは…チャンス…?そうだ、これからもっと体を鍛えて…心も強くして…和先生に相応しい女性になるんだ!私の想いはきっといつか…!