昼休み。
雫はスマートフォンを片手に、綾香の机までずかずかと歩いてきた。
「ちょっと綾香。これ、どういうことよ」
画面に映っていたのは、公開されたばかりの学院公式ページ――
『チューエル淑女養成学院 高等部|校舎・施設案内』。
その「生徒たちの日常」という欄には、中庭を行き交う生徒たちの写真が掲載されていた。
そして、そのど真ん中。
黒いスポーツウェア姿で、こちらへ微笑む綾香がいる。
「……何が?」
綾香は画面を一瞥した。
「何が、じゃないわよ! なんであんた一人だけセンターでちゃっかりポーズまで取ってんのよ! まったく、抜け目ないんだから!」
「誤解です。私は偶然、撮影範囲内にいただけです」
「偶然の人間がカメラ目線でそんなポーズする!?」
「カメラを向けられたので、視線を合わせました。自然な反応です」
「どこが自然よ!」
雫が頬を膨らませる。
綾香は少しだけ目を細めた。
「……もしかして、羨ましいの?」
「はぁ!?」
「自分も載りたかった、と」
「ち、違うわよ! 学院広報に協力してる私を差し置いて、あんたが目立ってるのが気に入らないだけ!」
「それを一般には嫉妬と呼ぶのでは?」
「うるさい!」
一瞬、雫が言葉に詰まる。
しかし次の瞬間、何かに気づいたようにニヤリと笑った。
「……あれぇ?」
「何よ」
「そういえば最近、あんた全然ピンク髪にしてないじゃない」
綾香の眉が、ぴくっと動いた。
「それが何?」
「別にぃ? 前は“誰かさん”に見てもらいたそうに、ちょくちょくピンクにしてたのになぁって」
「……髪色と心理状態との因果関係は証明されていません」
「あっ、その言い方! 怪しい!」
「何が怪しいのよ!」
「もしかしてぇ……旅行で距離が縮まったから、もうピンクでアピールしなくても大丈夫、とか?」
「なっ……! その推論には根拠がありません!」
頬を赤くする綾香。
今度は雫が勝ち誇った。
「ふーん? じゃあ、なんで顔赤いの?」
「生理現象です!」
「はいはい、非合理的ですねぇ~」
「雫……!」
廊下まで響く二人の言い争いに、クラスメイトたちは顔を見合わせた。
夏休み前なら、少し心配したかもしれない。
でも今は誰も止めない。
――あの二人、今日も仲良いな。
本人たちだけが、たぶん一生認めないけれど。😊
